静かに開いた扉の向こう。
体調が落ち着いてきたのか、仁が仰向けのまま顔だけをこっちに向ける。
「傷、まだ痛む?」
そばまで行って、しゃがみ込むと
「いや、もう治った」
何事もなかったかのように起き上がろうとするから。
「まだ寝てなきゃダメだよ」
慌てて手を伸ばしたのに、数時間前みたいに振り払われて。
「なんか仁、冷たくなったね」
思ったことを率直に伝えると、なぜか仁は面白そうにあたしを見てくる。
「優しいほうがいいなら、優しくしてやってもいい」
「え?」
「ただし、条件がある」
はい。
即刻ご丁寧に、お断りします。
「交換条件は拒否るよ。
あたし、冷たい人でも全然平気だもん」
本当は平気じゃないんだけど。
強めの口調で告げると、今度はつまんなそうにあたしを見てくる。
よし、勝った。
何も言い返してこないことに満足して、心の中でガッツポーズを決めようとした瞬間。


