ケンカ上等☆不良校上々↑↑




不意に、涙を拭ってあげていたあたしの手首を歩夢が掴んだ。

かと思えば、すぐに放して立ち上がる。



自分で涙を拭ってから、何かを決心したようにケータイを取り出して。


「仁先輩、俺の家に運ばなきゃっスね。
芽咲に説明して手伝ってもらうから外で電話してくる」




説明って……。


「歩夢、待って」



くるりと背中を向けられたところで思わず呼び止めると、

「あ、ここで電話しろってのは、なしっスよ」


まだ涙目のまま笑みをつくって振り返る。




「また泣くかもだし、かっこ悪いとこ、みくるに見られたくないっスから」


つくり笑い。

だけど、あたしには確かに優しい笑顔に見えた。

強いね、歩夢は。





「…わかった。
あたし、ちょっと仁の様子見てくるね」

「りょーかいっス。じゃっ」



片手を挙げて外へ出ていくのを見送ってから。


大丈夫、大丈夫。

呪文みたいに心の中で唱えながら、自分の部屋に向かった。