「だから美弥薇に勧誘されて、居場所をみつけるために棘に入った……みたいなんスけど」
そこには結局、仁の居場所はなかった。
ただ頂点に立つためだけにケンカを繰り返して。
無意味に誰かを傷つけなきゃいけない。
罪悪感と、常に隣り合わせの生活。
「去年の冬、仲間を全員敵に回す覚悟で、仁先輩は美弥薇から離れることにしたって」
それが、きっと太陽が言ってた棘仲間割れ事件ってヤツか。
「俺、棘って名前が出てくるたび、知らない振りしてたけど実際は全部知ってたんス」
歩夢の声が、だんだん震えて小さくなっていく。
「他のグループと……ましてや最強って言われてる敵と繋がりがあるなんて、誰にも言えなくて」
視線を落としてから、歩夢は続ける。
「みくる、今まで騙しててごめん」
俯いてるから表情は見えない。
ただ、謝罪の言葉から、どれだけツラかったのかが伝わってきた。
信頼してる仲間に嘘をつくなんて、簡単にできることじゃないよね。
「けど…っ、仁先輩は、悪い人なんかじゃないんスよ。
俺のことだって……、何回も助けてくれてっ」
それから涙を我慢するように、あたしに訴えかけてくる。
「俺………っ俺、間違ってたのかな」


