「そっスよ。
男なら我慢してください先輩!」
え?
妙な違和感を感じて歩夢を見ると同時。
あたしの手にあった消毒液は歩夢の手の中へ。
「だいたい、何なんスか。
普通にケンカしてれば仁先輩なら負けなかったくせに」
そう。
それはまるで、何かを隠すのをあきらめたみたいに。
いつもより強い口調で訴えてから、手慣れた手つきで消毒を強引にする。
どういうこと?
「はぁー‥」
歩夢がため息をついてから、しばらく無音が訪れた部屋。
この2人、知り合い?
新たに生まれた疑問を胸に、あたしは聞けずに静止した。
だから、手当てが終わってから歩夢に呼ばれて良かったのかもしれない。
誰もいないリビングで向かい合って、知ってることを教えてもらった。
「俺が中学生の時、仁先輩に助けてもらったことがあって。
だから知り合いっス」
これは、さっきまでの歩夢の言葉から予想していたこと。
「だから、みくるが言ってた赤髪の人、って仁先輩かなって思ってたんスけど」
そこで、言いづらそうに口ごもる。
「言わなかったのは、仁先輩が敵だったから……」


