「こっち」
指示をしながら歩いて数分。
「仁、歩夢、がんばって」
家に着いた時には全員が呼吸困難寸前の状態。
玄関で靴を脱いで、あたしは救急箱を探り出して。
歩夢は残る力で仁をあたしの部屋まで連れて行く。
ベットに横なった仁の顔を見て、あたしは無意識に宙で止めた手をぎゅっと閉じた。
「ヒドい傷……」
顔にできた傷口は、ほとんど血が固まっていて。
あたしが行く前に、誰かにケガさせられたの?
あの女の子も関係あるの?
問いかけの答えが、みつからない。
消毒液を片手に手当てしようとしても。
近づけた手を、振り払われる。
「……触るな」
かすれた声で、そう言われて。
「ダメだよ。
ちゃんと消毒しなきゃ」
なんだか、無傷なあたしのほうが泣きそうになる。


