場の空気は、充分過ぎるほどに重苦しい。
空の青さが、ここで起こっている状況を際立たせているかのように。
「あ、ちょっ」
障害を避けて路地に差し込む光は、すごく不釣り合いだった。
「みくるっ」
追いかけてくる歩夢の声に答えるだけの余地がない。
仁は?
あの痛々しい傷は?
いてもたってもいられなくて、あたしは物陰の外へ飛び出していく。
視界が開けて辺りを見渡すと、すぐに知ることができた。
「仁っ!」
周囲に散乱するガラスの破片。
遜色な建造物の跡。
いかにも人工的に加えられた破損の数々。
きっと、ここで何かあったんだ。
事情はどうであれ、いい方向でないことだけは確か。
「しっかりして」
しゃがみ込んで、仁の上半身を抱き起こす。
一瞬苦痛そうな表情を浮かべたけど、うっすら開いた瞳があたしに真っ直ぐ向けられた。


