歩夢!?
驚いて声が出そうだったけど、口が塞がれていたおかげでギリギリ阻止。
「説明は後っス」
あたしが質問するであろうことを察したのか、歩夢は片目を一瞬瞑ってニコッと笑う。
そんな時、壁の向こう側からコツコツと足音が聞こえて。
「こっちっス」
手を引かれて、さらに物陰へと身を隠す。
そこで、いきなり止まった足音に変わって反響した声。
「───私を潰してくれても構いません。
ただし、可能ならばの話ですが」
数秒間、声に対する返事がない。
もう返事はないと判断したのか、再びゆっくりと歩く音が繰り返さる。
あたしは緊張感と共に息を殺して、ただ相手が去るのを待った。
遠くへと消えていく音。
一瞬にして現れた静寂の波。
本当に相手に気づかれずに、隠し通せたのか。
不安に自分でも理解しがたいくらい、ドクンドクンと飛び跳ねる心臓。
押し潰されそう……。


