「そう簡単に物事が進むと思うなよ」
いつもの、真っ赤な髪が目印だった。
あたしの知ってる響く声じゃなくて、苦しそうにちょっと掠れた声を出す仁の姿。
「───そんな身体で何ができるというのですか?」
女の子は嘲笑うわけでもなく、坦々と問いを向ける。
「俺は、俺のやりたいようにやる。
いつか……おまえを潰す」
それに対して、強引に綻ばせた仁の顔は傷まみれで。
踏み出そうとした瞬間、膝から折れて地面に手をついた。
仁っ!
思わず大声と共に駆け出そうとしたあたし。
だけど、発したはずの声は声にならなくて。
無理矢理、背後から口を手で塞がれた後、建物の陰へと引き込まれた。
「っ…!」
誰!?
バクバクしてる心臓に耐えながら、振り返ろうともがく。
捕まってる恐怖なんかよりも、仁が大丈夫か気になってしょうがない。
「今出て行っても、こっちは無力なだけっスよ」
聞き覚えのある声が耳をくすぐって、身体を縛っていた力が緩んだ。


