大きなお屋敷から出てすぐ、綺麗な庭でみつけた後ろ姿。
「翼っ!」
大声で名前を呼ぶ。
それでも庭に設置された噴水に、声がかき消されてないか不安になって。
「どうした?」
振り返った翼を見て、ちゃんと声が届いてたんだってひと安心。
駆け寄るけど、なんだか近くまで行くのには抵抗があった。
「あのね、」
中途半端に距離を置いて、あたしは口を開く。
だけど、あたしは何が言いたいんだろう。
何を聞きたいんだろう。
疑問を解決して、それからどうしたいんだろう。
ぎゅっと首からかかる指輪を強く握りしめる。
前に、進まなきゃ。
「かなり前だけどね、拾ったの」
ずっと身につけていたものをはずして。
「コレ翼のだよね?違う?」
目の前の好きな人へと手渡して。
「なんで、おまえ………」
怪訝な表情をする相手に、無意識に向けた曖昧な笑顔。


