「あっ翼先輩、どこ行くんスか」
唯一捉えた歩夢の少し大きめな声。
「屋外」
それだけ言って、部屋を出る翼。
絶対おかしい。
「つばっちゃん、急に声の調子暗くなったわね」
アキちゃんの言葉に、なぜかビクッと体が震えた。
信じたくなかった。
翼の様子が、数分前と違っていたのを。
「翼のとこにも、彩音連絡してないのかなぁ」
芽咲がそう言ったのを合図に、あたしは立ち上がる。
「みくるちゃん」
歩き出す手前、声をかけてきたのは太陽。
「追いかけるのはいいけど、後悔しないでね」
複雑そうな笑顔でそれだけ告げられ、静かに頷いてみせる。
後悔。
行動してからじゃなきゃ、わからない。
だったら、前進あるのみだよね?
「太陽、相変わらず鋭いね」
部屋を出る瞬間、振り返って笑顔を向けると同じく笑顔が返ってきた。
“がんばれ”
音はなく、唇がそう形づくるのと一緒に。


