あたしは、思わず聞き返す。
とは言っても、首を傾げるだけなんだけど。
「今まで幸せだって思ってたことも、それ以上に幸せだと思うヤツを知ったら幸せじゃなくなる、っつーか」
そこまで言って、こっちに真っ直ぐすぎる視線が向けられる。
あたしは数回、瞬きをした。
なんとなく、落ち着かなくて。
「まぁ幸せだけど、言うほど幸せじゃなくなんだよな。
フツー、みてぇな感じ?」
うん、普通ね。
それって幸せの度数が減るってこと?
よく意味がわからないや。
「おまえには、一生わかんねぇよ」
そんな、決めつけなくても。
「なぁ〜、とりあえず歩こうぜ?
歩きながらでも夜空は見えるし!
なんてったって夜空は世界共通の美景だし〜」
「おい、だからって先行くな」
両手を高く挙げた太陽に続いて、翼は早歩きし始める。
「おまえも早く来い」
振り返り際にそれだけ言われて。


