校門を出た頃には、すっかりあたしはヘトヘトになってて。
体温が急激に上がったせいで、妙に暑い。
膝に手を置いて肩を上下させながら見上げれば、爽やかな笑顔が。
「いや〜、走った走った」
どうして、この人こんな元気なの?
おかしいでしょ。
「今日暖かいね〜」
そんな太陽は、伸びをしながら言って。
「暑っ‥」
それから翼は小さく呟きながら、力なくしゃがみ込む。
「あたしたち、何のためにこんな走ってたんだっけ?」
走ることに夢中で本来の目的は、もはや行方不明。
綺麗なものがナンとかって言ってたような。
「そうだった〜、上だよ上」
「上?」
「聞き返さないでいいから空見てみて」
薄暗い中に見える無邪気な笑顔。
その表情と言葉に促されて、あたしは空を仰いだ。
「………すごい」
無意識に声になったのは、その一言だけ。


