「あたしさ、友達のままでいたほうが良かったのかな、って思うんだよね」
「え?」
「告白なんかしないで、ずっと友達なら、翼の近くにいられる気がして」
廊下には、足音だけがやけに大きく響く。
あたしが求めなくたって、きっと翼は助けてくれる。
あたしたちは、そーゆー関係。
だから、必要以上に求めたりしないほうがいい。
翼は稲妻を潰さないために、あたしを守る。
それだけで、いい。
それが正解なんだ。
「じゃあ、告白はなかったことにして、って翼先輩に言うんスか?」
ほんの少し、歩夢の声がさっきより小さくなったように感じた。
「………それは、」
言わなきゃいけない。
でも、なかったことにして元に戻れる?
返事を聞くのは怖いけど、可能性があるなら。
「言えないかも」
あたしの出した答えを聞くと、歩夢は優しく笑ってみせた。
「なら、問題なしっス」


