「うわっ」
何かあったわけでもなく足を止めた歩夢に、見事ぶつかってしまったあたし。
「ほら、やっぱりわかりやすい」
体ごと振り返った歩夢は、呆れたように笑って言う。
「今、好きな人のこと考えてたっスよね?」
「えっ、」
「今さら言い訳してもバレバレっスよ?」
当てられた事実に、言い返せない。
黙って俯いてると、また手を引かれた。
「そんなに好きなら、後悔する必要ないっスよ」
ゆっくりになった歩調。
それは、きっと歩夢の優しさで。
あたしは、とことん周りに甘えてばっかりだって思う。
「伝えられたなら、いいじゃないっスか。
自分の気持ち」
うん。
そう考えれば、進展したってことだし後悔なんていらない。
そうなんだけど………。
そんな簡単にプラス思考できるほど、あたしは強くないから。


