「あぁ、これっスか?」
あたしの視線に気づいたのか、袋を顔の横まで持ち上げてからニコッと笑う。
「白石に借りてたCD、返しに行かなきゃいけないんスよ。
みくるは?どっか行くんスか?」
今度は、あたしが質問を振られ、少し戸惑いながら答える。
「部屋にいても暇だから、室内散歩」
「あははっ、散歩って」
「だって本当に暇なんだもん」
人の家の中を散歩するってことが変なのは、わかるけど。
そんな笑わなくてもいいとも思う。
散々面白がられて、歩夢は羨ましいくらい笑顔で。
「そんな暇なら、一緒に太陽のとこ来てくれてもいいっスよ」
片手で荷物を持ったと思えば、あたしの手を引いて歩き出す。
「え、ちょっと、歩夢っ?!」
呼びかけると、足は止めずに向けられた笑顔。
「寂しいんでしょ?
それは俺も一緒っスから」


