歩く度、自分の足音が響き渡る。
なんだか、廊下さえも広すぎて怖い。
まだ慣れないこの家は、例えるなら、まさに巨大迷路。
これほどまでに、広い家が嫌だと思ったのは初めてかもしれない。
狭い家で暮らすほうが、なんだか孤独を感じない気がして、あたしには合ってるし。
────ガチャ
ふと、数歩先で開かれた1つの扉。
部屋から出てきた人は、あたしには気づかず、どこかへ向かうみたいだ。
あまり身長は高くない。
小柄で、髪は黒くて。
「歩夢?」
「───っ!」
その背中に声をかけると、驚いた顔をして振り返る。
「はぁー‥なんだ、みくるか」
それから、あたしだって認識したのか、安心したようにため息をついた。
歩夢の手には、ケータイと何かを入れた小さめの袋。
これから、どこかへ行くのかな?


