「今は落ち着け。な?」


あたしの両肩を掴んで、優しい口調で話しかけてくれる。


けど、そんな言葉も今は耳に入ってこない。





「…っ好き…」



相変わらず力を抜かないあたしに対して、翼は無理矢理離すようなことはしなかった。



背後にあった建物の壁に、もたれるように座り込んでいくだけ。

あたしも離れないように、しがみついたまま、しゃがんでいく。




いつまでも離さないあたしに呆れたのかな?

頭上からため息が聞こえた気がした。




「ったく‥しょうがねぇな。
泣きやむまで付き合ってやるよ」



不思議と口調は、予想してたのより、ずっと優しい。


それに答えるように、あたしは力いっぱい抱きしめた。




翼はあたしの頭にポンと手のひらを乗せて。

声を押し殺して泣き続けるのを、慰めてくれる。




「離れたりしねぇよ。
だから安心して思いっきり泣け」