「最近な、学校同士の争いがデカくなってんだ」
それから、優しい口調で、翼は話を続ける。
「あちこちでケンカが起きてる。
だから、こんなとこ1人で歩くんじゃねぇぞ」
知らなかった。
何も、周りの出来事なんて。
『こんな時に1人にさせるのか、おまえんとこの連中は。
油断しすぎにも程があるぞ』
そーいえば、仁がそんなこと言ってたっけ。
あの言葉も、ひょっとして今の状況を指し示していたのかな?
「それなら、ちゃんと教えてくれれば良かったのに」
こんな時まで文句しか言えない自分が、どうしようもなく憎いよ。
本当は、お礼を伝えたいんだ。
心配してくれて、ありがとうって。
「おまえさ、こういうこと言うと気にすんだろ」
「え?」
呆れられるかと思ってた。
予想外の言葉に、あたしは何度か目を閉じたり開けたりする。
「もし、ケンカが増えてるって言ったら……俺らの安全を気にすんだろ」


