その場に立ち止まって、ちょっとだけ大きな声を出す。
「ん?」
けど、ようやく振り返った翼は、少し疲れたような顔をしていて。
あたし、疲れさせちゃったのかな。
「………ううん、なんでもない。
早く用事済ませて帰ろ?」
不安になった気持ちを隠すように、笑顔をつくった。
無理だよ。
翼にとってあたしは、普通のどこにでもいる女の子なんだから。
クリスマスに一緒にいられることだって、奇跡に近い。
守るって言ってくれるのも、単純にあたしが稲妻のリーダーだから。
ただそれだけのこと。
自分の足元を見ていると、ふと前から人の気配を感じた。
「わりぃ、寒いよな」
顔をあげると、翼があたしの手に目を向けているのがわかって。
合わせていた両手を慌ててうしろに隠した。
「寒くないから大丈夫だよ」


