「…わかったよ」
静かに返された答えに、あたしは顔を上げる。
「本当っ?」
聞き返すと、縮まった距離。
街灯の光で、顔が少しだけど見えるようになった。
あれ?
この人。
「本当だ。
その代わり、」
どこかで………。
「味見させろ」
「え?」
どこかで見たことあるよね?
自分への質問が頭をグルグル回る中。
「ちょっ───」
顎をクイッと上げられて、唇に何かが当たった。
「っ!」
それは、数秒間の短いキス。
驚いて目を見開いてるうちに、唇と唇の間にできたわずかな隙間。
「ごちそーさま」
至近距離で言うから、熱を帯びた唇に、熱い息が触れる。
「な.なんで?」
そんなあたしの疑問は届かない。
今のって、キスだよね?
そーなんだよね?
街灯に照らされたあなたは、すごく綺麗で。
でも、それよりも印象に残ってるのは、あの真っ赤な髪だった。


