「やだなぁ、もう。
そうゆうことは、もっと早く言ってよねぇ」
あたしの反対意見を告げる間もなく、ますます上機嫌になるお隣さん。
「でも性格が、」
言いかけたセリフでさえも
「性格なんてね、可愛けりゃ何でも許されんのよぉ」
中断された上に否定される。
何でもって、さすがに許されないことだってあるよね?
「みくる、眉間にシワ寄ってるぞぉ」
「え、嘘っ」
指摘に慌てて手で覆った顔。
ヤバい、考え込みすぎちゃったみたい。
そのまま顔を隠してると、さっきまでのかすかな振動が収まる。
車、止まったのかな?
「あ、着いたよ」
指の隙間から覗くと、首を傾げて笑みを見せる芽咲。
背後の窓からは、駅へ駆け込む人たちが見える。
そっか、意外とあっという間に目的地なんだ。
「降りよう、みくる」
それだけ言って、先に車の外へ。
あたしも降りなきゃ、なんて思って慌ててたらドアを芽咲が開けてくれた。


