せっかくの海だ。

幼なじみの2人にも、恋愛のムードくらい生まれるかもしれない。


ここであたしが間に入ったとしても、きっと邪魔しちゃうだけ。

だったら、少し離れてるところから見守ってるほうがいいじゃない?



「でも、みくるをここに残すのも心配っス」

「なにそれ、どーゆー意味?」


あたしにだって、ちゃんと留守番くらいできるんだからね。

そんな幼稚園児じゃあるまいし。


「大きなお世話」

言い返して、顔ごと視線を外した。


「違くて、だから、その」

頭をひねって言葉を探す歩夢を、あたしは頬を膨らましたまま今度は睨む。



「言葉浮かばないんでしょ?
もう、ムダな心配いらな───痛っ」


心配いらないから、そう言おうとしたのに。

途中で、後頭部に何かが当たって。



「な.なに?」

あたしのセリフは中途半端に終止符を打つ。



「バーカ、油断してんじゃねぇよ」

声をたどって振り向けば、ボールを持った翼が立ってて。



今、ものすごく見下されてる感が……。