父親は俺が幼いころに病気で死んだ。 最期に俺に向かって、母さんをよろしくな、とそう言って。 母さんは、父親が息を引き取ったとき、その一度しか俺の前で泣かなかった。 俺がいないところで隠れて泣いていたのは知っていた。 でも、知っているからこそ、いつも気丈に振る舞っている母さんに何も言うことが出来なかった。 だから俺は、母さんに迷惑をかけないようにいつもニコニコとした笑顔を顔に貼りつけてきた。