俺と香織は、今日で付き合い始めて1年になる。

――幸せだ。

香織は優しいし、器量よしだ。
俺だって、記念日は忘れないし、誕生日だって0時ぴったりに電話した。

――本当は家に押しかけたかったんだけど…さすがにそれは迷惑だと思ってヤメた。

そんな幸せが、突然壊されるなんて…知るよしもなかったんだ。

「僕らはずっと一緒だよ…香織」
「悠也…嬉しい…」
そうやって抱き合ってから、キスして。
記念デートの最後はそうやって締めくくった。

夜も遅いし、香織を家まで送って、家の前でまたキスして…今日を終えた。

「明日も休みだったらなぁ…」
この幸せの余韻を、あと一日噛み締めたい。
けど、今日は日曜。
明日は月曜で、もちろん学校がある。
溜め息をつき、夜風の涼しい初夏の家路を歩く。

月が綺麗だ。
星もこんなに見えるのか。

香織と付き合ってから、俺は世界のすべてが好きになれた。
今までは、こんなつまらない世界が大嫌いだった。
死んでも構わないと思ってた。
けど、今は違う。
愛する香織と、もっともっと一緒に時間を歩みたい。
…100年なんかじゃ全然足りねぇよ、神様。
「…くっせーな…」

自分で言って、ちょっと恥ずかしくなった。
もう家に着くころ。
今まで足下を映していた瞳を真っ直ぐ前にすると

見慣れた家の前に、
見知らぬ黒い人影があった。