誰かが、手をひいてくれていた。
大きく優しい手は、俺の人差し指だけを軽く握っている。
全ての指を絡ませようとすれば、多分繋がりはなくなるのだろう。
「…っ」
時々口からもれる低い叫びは、俺の身を震わせた。
「……少年?」
顔を見せないまま、少しだけ後ろを向く。
かろうじて見える口元からは、赤い血が流れていた。

「…少年は、俺の姫を守ってくれるのか?」


理由も分からないまま、俺はいつしか頷いていたのだ。
上目づかいに顔を見上げると、その口元は満足そうに微笑んでいた。