《タケSide》

俺の初恋は,初めてのことがいっぱいだった。

★☆★☆★
香野 威琉 もうすぐ13歳

俺,『好き』って感情を知らなかったんだよね。

そりゃ,小さい頃から女の子にはモテたよ?
毎年バレンタインデーなんかは物凄い量のチョコレートを貰うし,告白なんかもそれなりにされてきたし。

でも,告白は決まって断るようにしていた。

その理由は,『ワカラナイ』から。

人を好きになったことなんてなかったし,どうせ傷つけちゃうだけだから…

スキって…何だろう??


そんな俺の,初恋の相手。

隣のクラスの岡本 桜良(オカモト サクラ)。


出会いは,放課後の教室。

宿題をやらなかった俺は,居残りをさせられていた。


そこに入ってきたのが岡本。

彼女は委員会の仕事で掲示物を配布しに来たところだった。

俺が算数の問題に苦戦していると,話したこともないのに俺に近寄ってきて

「その問題ややこしいよね。ちょっといい??」

と言い,俺の手から鉛筆を奪うと,ノートになにやら文字を書いていく。

一通り書き終えると,

「こういう風に考えると簡単だよ★」

と言って俺に微笑み,教室を後にした。


ノートの端っこには,『頑張ってね』と書いてあった。



俺は,初めて女の子に触れたいと思った。

気付くと,いつも目で追っていた。

コレが恋なんだ,と気付いた12歳。


でも,俺は一歩を踏み出せなかった。

あっという間に迎えた卒業式,俺は想いを伝えられなかった。

岡本は頭が良かったから中学受験に受かり,春から市立の中学に通うらしい。

もう会うことは,ない。


さよなら,俺の初恋。

★☆★☆★