えんどう豆のゆくえ

 全部、全部、この子のせいだ。それなのになぜこの子は、こんなに親しげに私に話し掛けて来るのだろう。

 
 とった癖に。私から風馬をとった癖に。そう叫んでいる自分がいた。もちろん風馬は、もともと私のものなんかじゃない。

 
 それでも、私は風馬がずっと私の傍にいてくれると思いたかったのだ。子供っぽい妄想が自分の苛立ちを生んでいることに気付いた時、私はどうしようもなく恥ずかしくなった。


 そう、本当は、何となく分かっていた。あの時私の胸に一瞬浮かんだのは、美姫の差し出した本を袋ごと川に放り込む私の姿だった。それは本当に一瞬だったけれど、私は無意識のうちにそれを実行しようとしていたのだ。
 

 さぁっ、と私の全身から血の気が引いていった。