「なぁ、貸してくれへん?その本」 今でも、その時何故そう口走ったのかは分からない。 ただ、頬を染めてはにかみながら笑う美姫に、自分でも理不尽だと分かっている苛立ちが込み上げて来たのは覚えている。 風間にあんな、心配そうな顔をさせていた癖に。 美姫が完全に孤立してしまってから、ただでさえ笑わない風馬は、さらに笑わなくなった。 いつも優花たちが美姫を馬鹿にするのを苦々しげに見やって、私の方なんか見向きもしなくなった。