「私が好きなのは、あんまり知られてないやつで…… さやえんどうの話なんだけど、安西さん知ってる?」 どうやら、自分が好きな作品はあまり有名ではないと言いたかったらしい。 童話なんて興味はなかったのに何故か、私はその話を知っていた。 確か、弾けた莢から飛び出たえんどう豆たちが、いろんなところへ飛んでいっていろんな生涯を遂げる話だったと思う。 「知っとるけど、何?」 「安西さんもよく本読んでるよね。この話知ってる子初めて。すごいねっ」 美姫は目を輝かせている。