「アンデルセンって、人魚姫とか赤い靴とか、暗い話多いやんな」
何でこの子とアンデルセンの話なんかをしているのだろうと思いながらも、そう返してみる。
「うん、でも好きなんだ」
私はまたふうんと鼻を鳴らした。
相手がこの口下手な子では、会話は長続きしそうにない。私も話の上手い方ではなかったし、見切りをつけてその場を去ろうとしたときだった。
「あの……この、この本……短編集でいっぱい有名な話が入ってるんだけど私、そんなの別に好きじゃないの」
「……は?」
好きなのか好きでないのか、どちらなのだろう。
そんな私の訝しげな顔を見た美姫は、顔を赤くしながら説明しようと一生懸命になった。
