「りょくほうどう……って言うんだ、あの本屋さん」 「せやで。あんな目立たん本屋よう見つけたなぁ」 「引っ越す前から聞いてたから。本屋さんの近所だって」 ふうん、と私は鼻を鳴らした。 「何買ったん、本」 「アンデルセンの童話集」 美姫の声は、その本の名前を言う為にあるのではないかと思った。〝美姫ちゃんとアンデルセン〟似合いすぎて可笑しい。 よくある小説などだと、可愛らしい子は絶対何かしらギャップを持っているものなのに、人はけっこう見かけによるものなのかも知れない。