えんどう豆のゆくえ

 でも私は、その代わりにいきなりそう言ったのだ。

「それ、緑芳堂のやろ」

 茶色い袋を指差す。

 緑芳堂は小さくて古い割に品揃えの良い本屋だ。

 校区内にあるので、漫画雑誌の発売日には、小学生やたまに中学生、極まれに高校生が集まっている。

 洗濯機にかけて縮ませたみたいな小さくてしわくちゃなお爺さんがいて、寝ているように見えるのに万引きは絶対に見つかるという伝説があった。

 私のクラスの男子たちはよく「地獄目のじじい」と悪態を吐いていた。