えんどう豆のゆくえ


 「何、違った?ごめんごめん」

私の沈黙の意味を取り違えたらしい女の人はやけに慌てて手をパーにし、胸の前でぶんぶん振った。子どもがそういう冷やかしを毛嫌いすることを知っているらしい。

 慌てるくらいなら言わなければいいのにと思うけれど、仕方無い。それを分かっていてつい言ってしまうのが大人というものなのだ。

「あ、もう雨止んだみたいよ」

 そして彼女は、その話題を必死で打ち消すように、いきなりそう声を上げた。

 小さい窓から外を見ると、一瞬まだ雨が降っているように見えたけれど、すぐにそれが雨樋からぽたぽた落ちる水滴だと分かった。

「じゃあ、帰りますね。ありがとうございました」