えんどう豆のゆくえ

 急に足の先から血の気が引いていった。そう、ここは美姫の越して来た家で、あの女の人は多分、彼女の母親なのだ。

 この地区は、ぎりぎりで私の学校の校区である。そこにある空き家にいきなり人が住んでいるなんて珍しいことだ。
 
 どうして美姫の家である可能性を考えなかったのだろう。正座した足に冷や汗が噴き出した。
 
 今更そんなことを思っても仕方無く、私はそのままちょこんと正座して俯いているしかなかった。


「おまたせ。はい、これタオルね。お菓子あるんだけど食べる?」


 渡されたタオルは私の家の二倍の厚みで、出されたクッキーは手作りらしい。

 美姫はいいなあと、子どもっぽい感想を抱きながら、クッキーの猫耳にあたる部分を齧った。

 それを見る女の人の目はどことなく嬉しそうで、帰ると言うのは気が引けた。