えんどう豆のゆくえ


「ごめんねぇ、うちの娘かと思ったら知らない子だったから……。あなたすごく濡れてるし、ちょっと入って行かない?」

 その人は背が高くすらっとしていて、Tシャツにジーンズというラフな格好が様になるような、若い感じの人だった。外見に比例して、口調も若々しい。しかも、この関西の田舎町では珍しい標準語だ。

「……でも、早よ帰らな」

「ああ、門限とかあるの?電話しとけば大丈夫でしょ。さ、入って」

夏休みのしおりの中の、変質者に関する項目が頭の中をちらついたが、この人はおんなの人だし、濡れたくないし、私は変なことをしたくなるほど可愛くない。

それに今は夏休みじゃないと誰も聞きやしないのに心の中で言い訳して、私は家の中に入れてもらった。野菜をお供に。