雨がひどくなったのは、ちょうどとある空き家の前を通りがかった頃で、私は迷わず屋根の下に滑り込んだ。
焦っていたので、空き家ならないはずのパンジーが植えられたプランターが置いてあったのにも気付かずに。
その家はかなり前から空いていて、あせた白色のぼろい平屋だった。自転車をがたがたと屋根の下に移動させていると、いきなり目の前の戸が勢い良く開き、その中から三十代前半くらいの女性が顔を出して、「きゃあっ」と素っ頓狂な声を上げた。
大きい声は大嫌いだった私は、さっさと謝って逃げようと向きを変えたのだが、
「待って」
という一言に素直に立ち止まってしまった。我ながら自分の馬鹿正直さが嫌になる瞬間である。
焦っていたので、空き家ならないはずのパンジーが植えられたプランターが置いてあったのにも気付かずに。
その家はかなり前から空いていて、あせた白色のぼろい平屋だった。自転車をがたがたと屋根の下に移動させていると、いきなり目の前の戸が勢い良く開き、その中から三十代前半くらいの女性が顔を出して、「きゃあっ」と素っ頓狂な声を上げた。
大きい声は大嫌いだった私は、さっさと謝って逃げようと向きを変えたのだが、
「待って」
という一言に素直に立ち止まってしまった。我ながら自分の馬鹿正直さが嫌になる瞬間である。
