目をぎらつかせ、組み敷く男。

当然梓は僕を押し退けようと抵抗を試みるが。

「大人しくしておくれ」

僕は彼女の両手を押さえつけた。

地面に磔にするような形。

ちょうど十字架の形だ。

吸血鬼の末裔が、イエス・キリストの如く磔にされる。

何とも皮肉なものだ。

僕は梓に顔を近づけ、彼女の首筋を粘着質に舐め上げる。

そしてその柔らかい肉に歯を立てた。

力加減は爪を立てた時と一緒。

もう少しで牙がプツリと皮膚を突き破る。

そんな絶妙な、痛みを伴う甘噛み。

「っ…あっ…!」

梓が声を上げる。

苦痛と…ほんの僅かに鼻にかかった甘さを感じさせる声。

その声を聞くだけで、僕は達してしまいそうなほどの下卑た快感を味わっていた。