出発して駅まで徒歩で十五分。

駅から満員電車に揺られる事三十分。

そしてまた駅から徒歩で十五分。

やっと丘の上に私の目的地が見えてくる。

琉羽爾亜学園高等学校。

渡蘭市に一つしかない高校だ。

私はそこの生徒だった。

余裕を持って坂道を歩いていると。

「あら出碧さん、おはよう」

優雅な足取りで歩いていた女生徒が私に声をかけてくる。

背中まで伸びた黒髪。

前髪は真っ直ぐに切り揃えられ、風にたなびいている。

宝石のような瞳がキラキラと輝いて見えた。

彼女…杖縁(つえへり)梓ほどの器量よしだったら、世界も随分変わって見えるのだろうな、などとボンヤリ考えてしまった。