母と距離を置き、正座したまま膝の上に置いた両手。

その手が硬く硬く握り締められる。

「……」

その様子を見ながら薄笑みを浮かべる母は、一体何を思っていたのだろう。

「杖縁はいまや、『楽園』で最大の勢力を持つ血族だ…それが堕蓮持ちまで抱え込んでいるっていうのは…どうにも面白くないやね…そう思うだろ?誠」

「…はい」

音もなく。

気配もさせず。

僕はスッと立ち上がる。

「渡蘭市掌握の障害になるかと…野須平の『狗』として、堕蓮持ちの確保、または抹殺は何より優先すべき任務かと」

「わかってるねぇえ…やっぱりお前は野須平で最も優れた『狗』だよ」

満悦といった表情で煙管を振る母。

僕は即座に部屋を出て、任務に向かう。

…息子思いの母親だ。

僕は彼女に感謝していた。