そうと決まれば。

俺はまず梓に一眠りしたいと要求した。

彼女はすぐに執事に寝室の準備をさせ、俺を案内する。

執事に頼むのではなく、自ら案内する辺り、そのご機嫌取りが見受けられて愉快だった。

…案内された寝室は、一人で眠るには不必要なほどの広さだった。

俺は靴も脱がずにベッドに上がり、五分もしないうちに深い眠りに落ちる。

恐ろしく寝心地のいいベッドだった事もある。

久し振りに熟睡の出来る、上等な寝室だった。

それまで路上で雨風をしのぎつつ眠っていた事を思えば雲泥の差だ。