執事が車を車庫へと移動させる間、俺は中庭で梓と二人きりになる。

芝生、噴水、手入れの行き届いた庭園。

イングリッシュガーデン調、とでもいうのだろうか。

どこまでもふざけた屋敷だ。

「で、何のつもりだ?」

俺は両手をポケットに突っ込んだまま、梓の方に向き直る。

…彼女は不敵な表情のまま俺を見た。

「お腹は空いてる?」

尋ねる梓。

「いや」

「眠くない?」

「別に」

「何か欲しいものは?」

「ない」

「じゃあ決定!」

彼女はスカートを翻して俺に背を向ける。

「武羅人、貴方は今日からこの屋敷に寝泊まりなさい。自分の家と思って自由に振る舞って構わないわ」

どういう道理だろう。

勝手にそんな事を決められるのは俺の『エゴ』に反していた。