貧富の差、という奴がある。

生きる為にあくせく働く人間どもには…まぁ平たく言えば稼ぎの差でそんなものが発生する。

この世に生きる全ての生きとし生けるものの中で、そんな差が生じるのは人間だけだ…と、俺は梓に会うまで思っていた。

が。

梓が連絡を入れてから十五分後。

彼女を迎えに来た黒塗りの高級車を見て、俺の考えは一変する。

そうなのだ。

人間社会に溶け込んで、人間ヅラして生活している人外の中にも、貧富の差というものは生じるのだ。

こちとら徒歩で流れ流れて生きるはぐれの亜吸血種。

だというのにこの年端もいかない小娘は、お抱えの運転手付きで家…もとい屋敷までの移動をするという。

徒歩などというものは移動手段ではなく、息を吸うのと同じ行為だというのだから言葉もなかった。