だが、あの女は違う。

傍らで抱きつく女にいいようにさせながら、僕は頭の中で全く別の女の事を考えていた。

…思考がひどくさめて、クリアになっていく。

あの女の事を思い浮かべる度にいつもこうだ。

胸を掻き毟りたくなるような切ない気持ちになる。

あの女は今頃、どこの男と踊っているのだろうか。

激しく、狂おしく。

どこで血の雨を降らせているのだろうか。

思い浮かべる度に堪らなくなる。

この手で、あの女の端正な顔立ちを苦痛に歪めたくなってしまう…。

「…野須平君…怖い」

傍らの女の声で我に返った。

女は少し脅えた表情で、僕の顔を眺めている。

「あぁ…ごめんごめん。ちょっと別の事考えてた」

「もぉ…どこの女の事考えてたの?」

拗ねて胸板に爪を立てる女を、抱き寄せて口付けた。

「馬鹿だな…君がいるのに別の女の事なんて考えないよ」

そう告げた。

『あの女』の事を考えながら。