杖縁。

その名は知っている。

ツェペリ。

デミトリ。

ノスフェラトゥ。

中世辺りから名の知られている名門吸血鬼一族の御三家。

そのうちのツェペリの血を引く亜吸血種だという話だ。

並みの人外ならば名前を聞くだけで震え上がるという血族。

しかし生憎と俺は教養がないし怖いものもない。

…折られた片腕をブラブラさせながら、ゆっくりと杖縁の女に歩み寄る。

「馬鹿ね!わからないの?雑種の野良犬如きがこの杖縁梓に敵う訳…」

「口上はいい」

俺は足を止める事なく言う。

「その杖縁様の実力とやらで、俺を止めて見せろよ」