渡蘭市(とらんし)。

日本の最南端に位置する島に存在する、人口二十万ほどの街。

夜更け。

その市の中にある琉羽爾亜町(るばにあちょう)へと俺は足を踏み入れた。

特に目的があった訳じゃない。

流れ流れて、この街に辿り着いただけだ。

俺のような流れ者には、定住の地などない。

目的もなくただひたすら彷徨い、本能と、欲望と…闘争のままに生きる。

…腹が減っていた。

ポケットの中を探る。

ガサリと紙の感触。

引きずり出すと、千円札が一枚クシャクシャのままで入っていた。

今日は『人間らしい』食事が出来そうだ。

俺は国道沿いをずだ袋片手にひたすら歩き、目に付いた24時間営業のコンビニへと足を運んだ。

弁当、サンドイッチ、飲み物。

千円で買えるだけの食料を買い、駐車場にしゃがみ込んで貪り食う。

まるで犬猫のようだな。

我ながら笑えた。