闇夜の数だけエゴはある

六百四十八合。

私と儚が交錯しあった回数。

アスファルトの地面に、コンクリートの壁に、縦横無尽に跳躍しながら、私と儚は暴虐の限りを尽くした。

人間ならば致命傷となる傷が二十箇所。

そこまでに至らない傷ならば、その倍は受けている。

その傷さえも常識外れの速度で治癒させながら、私達は対峙する。

互いに呼吸は荒い。

私は驚いていた。

出碧の一族の能力は『吸血』。

本来は直接的な攻撃を得意とするのではなく、虜を使った間接的な攻撃をするタイプ。

にもかかわらず、儚は私に一歩も譲る事なくここまで互角の闘争を繰り広げてきた。

「賞賛に値するわ」

私は地面を踏みしめる。

「ほざかないで下さい、雌豚」

儚は腰を低く落とす。

瞬発力と柔軟性を併せ持つ、野生の獣のような肉体。

いや、『ような』ではなく獣『そのもの』。

私達はヒトデナシなのだ。

そう形容した方が正しかった。