数メートルの間合い。

その間合いを維持したまま、私と梓は対峙する。

「どうする?儚。ここには貴女の能力を生かして虜にできるような人間はいないわ。何なら大通りに戻って『吸血』してくる?虜を作る時間くらい与えてあげるわよ?」

梓には、私の能力は筒抜けだった。

…私の能力は『吸血』。

古より存在する吸血鬼が持っている能力と同等のものだ。

血を吸った人間を、自らと同じ吸血鬼にしてしまう能力。

昼間学園で梓を襲った虜達も、私が吸血する事で生まれた者達だった。

…だが、その能力も所詮私にとってはオマケでしかない。

私も梓と同じ亜吸血種。

亜吸血種の本来の能力は類稀なる身体能力。

素手で岩をも砕き、人間ならば致命傷となる傷でもたちどころに回復させる。

そんな化け物じみた肉体そのものが最大の武器となるのだ。

「見くびらないで杖縁梓」

殺気を込めた視線を梓に叩きつける。

「出碧家再興の為に…貴女は確実に屠るわ」