しとねも、武羅人も。

邪魔する者は誰もいない。

四肢を失った儚など、赤子の手を捻るようなものだ。

「…ここにきて…」

呼吸を荒くしながら、儚が言う。

「ここにきて…『吸血』しておかなかったのが裏目に出ましたね…」

「…そうね」

冷ややかな視線で私は儚を見下ろす。

絶体絶命、という奴だろう。

だというのに、儚は微かな笑みを浮かべていた。

「貴女だけは…虜にはしたくなかった…心に何も余計なものを差し挟む事なく、私にひれ伏して欲しかった…そんな『エゴ』が…私の敗因…」

彼女はゆっくりと目を閉じる。

「負けを認めます…私を殺せば、武羅人の虜の戒めも解けるでしょう…」

言われるまでもない。

ここで儚を葬れば、私の総取りだ。

最後の最後で逆転だ。