跪いたしとねを見下ろす。

『吸血』の効果は覿面だった。

どんな強靭な精神の持ち主でさえ、強制的に下僕に仕立て上げてしまう。

あの『エゴ』の塊である武羅人さえ、一応形の上では私の狗と化したのだ。

確固たる信念を持たない、ただ闘争に明け暮れるだけの『エゴ』しか持たないしとねに、私の『吸血』から逃れる術などない。

「しとね、立ちなさい」

「…はい」

焦点の合わない瞳で立ち上がるしとね。

堕蓮持ちの証たる赤い瞳も、今となってはただ赤く光るだけ。

武羅人のような爛々とした炎のような強い光は宿っていなかった。