私の蹴りに対し、しとねが拳を合わせる。

『旋』。

野須平固有の能力。

先程までは互角の打ち合いが可能だったその打撃を交錯させた瞬間。

「え…」

私の視界の隅に、何かが舞うのが見えた。

それが『私の右脚』だと気づいた瞬間。

「きゃぁあぁぁああぁぁああっ!!!」

脚の付け根から噴き出す鮮血と共に、私は悲鳴を上げた。

「何だい…存外に脆いね…軽く受け止めただけだったんだけどねぇ」

片足で立っていられず、倒れた私を見下ろすしとね。

そこに先程までの老いさらばえた当主の姿はない。

希少な特殊能力を得て、闇の世界に君臨できるだけの力を身につけた女帝が、私の目の前に立っていた…。